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「ゼトからの文章通信を確認しました」

文章通信?

「こちらに」
「了解、まわします」



何故?
音幻師か、原因?
雷光師だったとは私の失策だ。
この状態になる他は考えもつかなかったのか?
しかし何故?
救援要請?
考える事は出来ただろう。
打つ手を失ったのか?
彼らが?
そんなはずは?
どういう事?



「ん?」

「どうした?」
「ゼトからの文章通信、どういう事?」
「文章?変なことするねアイツ」
「音幻師に知られない様にしたんだろう」
「あー、そういう事」
「たまには自身の頭も使えばどうだ、ニトガルド?」
「あたし、あんま頭良くないから」
「嘘、医術免許もってるくせに」
「何故それを!!!」
「あんたが教えたんでしょーが」
「そだっけ?」
「それで、中身は何だ?」
「待って。そんなに重くない」
「何々〜?ラブレターかにゃ??」
「ニト、ちょっと黙ってて」
「それで?」
「何が入ってたの?」



「「そういう事か」」



『ジル』
「わかってる、ゼトの計画でしょ?」
『乱雑では有りますが、彼が出したのであれば今はこれしかありません』
「そうね、そうでしょうね」
『これに対して、そちらからは有りますか?』
「あるわ、オームとニトを補助として送る事は出来る?」
『保険ですか?』
「中で戦闘になった以上は、後衛が三人も居ては邪魔なだけよ」
『了解しました、一分で整えます。二人に伝えてください』
「ありがとう、ゼトには私が」
『お願いします』





届いたのか?

「さあ、どうする?君らで俺らが殺れるかい?」

糞ったれ。

「相当の自信家だな!誰かに習わなかったか、己を過信する者は身を滅ぼすと!」

呼吸が荒い。

「生憎そういう優しい奴は周りに居なかったからなぁ!」

時間ねえぞ。
眠い。

「さっきから雷光師は喋らないけど、流れ弾で死んじゃった?!」

早く答えをくれ。

「こいつはシャイなんだ!言えてもこれくらいかな?!」

鼓動も早い。

「死ね紙ねえええええ!!!!!!」

つーかコイツラ消えてくれ。

「うわ、ストレートにくるね」

帰って寝たい。

「良かったじゃないか、気に入られてるみたいで!」

地獄に落ちろ。

「ふっふっふっふ、し、死ね死ね死ねしぃねぇぇエエええエええ!!!!!」

落ちろ落ちろ。

「喜んでいる」

左腕が痛い。

「あれで気にいってんのかよ。キモいぞ、あれは」

落ちろ落ちろ落ちろ。

「あーくそ、キツイ。来なきゃ良かったこんなとこ」

糞ったれ腹へってきた。

「仕事を放棄する気か、勤労は尊いものだ」

いたい痛いイタイイタイ痛い。

「命が保証されてたらサボらねえよ」

まだか、まだなのか。

「まあ、サボればまた別の理由で貴様の命は保証されなくなるだろうが」

早く早く早く早く早く早く早く早く。

「俺の今年の目標が決まった。お前をサボらしてその理由で殺されるのを笑いながら見る!」



瞬間、目の前が明るく染まる。


来た!!
急いで受信された文章を開く。
そこには簡単に作戦に同意と言う事と、その保険として後衛二人を補助として送ると言う事が記されていた。
俺の穴まで考えて補助までもか、さすがと言うしかない。
瞬時にそれをソウシに再送信、情報を並列化させる。
轟っ!!!!
またも雷撃が襲ってきた。
今度は右足をかすりはしたが、殺気が感じられたのでこれだけで済んだ。
これが無ければ、今ごろ俺の体は穴が空いていて、生命活動を停止していたのだろう。
つまり、死んでいたのだろう。
かすった痛みが俺に生きてて良かったと、思わせないあたりが現実的であるが。
その痛みを引きずりながらも、何とか移動して二ブロック先の室内に逃げ込む。
しかし考えが甘かったらしい。
雷光師の放つ雷撃はすさまじい殺気を放ちながら、二重のそれすらも薄紙のように貫き、反撃の隙を覗う俺に休む間を与えない。
左腕をもう一度焼かれたが、いちいち気にしてもいられず、痛みを押さえて反撃を行うが無駄に終わる。
この時点で後衛は屋上に到着しているはずなので、それがくる前に始めなければ。
俺は両手に握る愛銃を見る。
弾奏を捨て、新しい物に交換。
銃には異常無し。
予備弾奏を確認、十分だろう。
馬鹿の位置を確認。
そう離れてはいないか。
次に、深く深呼吸をする。
迷い無し。
精神状態を見る。
良好だ。
焼かれた個所以外は身体状態もすべて快調。


よし。


信号をソウシに送信し、同時に部屋を飛び出す。
銃口を向けるが、すでに雷壁が完成しているのを確認。
で、発砲せずにそのまま移動する。
もちろん爆音と共に音弾が襲ってくるが、移動する標的を撃つ時はねらう場所が限定しているのでそれを予測。
轟音を横で聞きながらも反撃。
たった一発を奴が放つわけも無いので、発砲を止めずに、そのままで全力の移動を開始する。
奴らを中心に、円移動を続ける。
途中に障壁となる通路もあったのだが、あえてそれを避け、体を常に相手にさらしておく。
一つ目の弾奏が打ち止め。
すぐさま排出し、新たな弾奏を装填、薬室に第一弾を咥えさせる。
なんども音弾の爆音とそれに破砕される備品達の破砕音を聞きながらも、移動は止めず、走り始めた所と丁度反対側についた所で物陰に潜む。
これで行けなければ全部アイツの所為。
俺が奴等を覗うと、雷壁が解除され俺にむかって雷光が放たれる寸前だった。
明るく淡い光が瞬時に印定式を書き上げて行き、掲げる腕に高圧の電量子が集まって行く。
うわ、これに当たったら確実に死ぬなーと思っていると、刹那、雷光師の印定式が消失。
変わりに雷光師とソウシが鋼のような腕と銃剣で競り合い、火花を散らしていた。
囮の俺を隠れみのに近づいていたソウシが雷光師に接近戦を挑んだのだ。
俺は音幻師にその均衡状態を破壊させるわけにはいかないので防御壁となっていた通路から踊り出し、音幻師に発砲。
音幻師はとっさの事態に混乱したのか、雷光師から離れるように俺の銃弾を避けてしまう。
その間にもソウシと雷光師は互いに押し合い、均衡状態を続ける。

この状態だ。これを待っていたんだ。













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