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「一つ、二つ、三つと消えて。
四つ、五つ、六つと生まれる。
七つ、八つ、九つと消えて。
十に全てが終わり去る。
ただ。
終わり去ったはずの残りかすから。
一つ、二つ、三つと生まれる。
四つ、五つ、六つと消える。
七つ、八つ、九つと生まれて。
十に全てが命にあふれる。
しかし。
あふれたその時に。
新たな滅びは始まるのだ。
繰り返し、繰り返し、繰り返し。
これでもかと。
それでも世界は壊れない。
壊れても、壊れても、壊れても。
“そのうちまた戻る”」
世界をすべて見た男は、そういった。
男はいって。
最後に心に決めた。
そう、心に決めた。
次は。
次こそは。
「世界を終わらしてみせる」
男はそういって本を閉じた。
―××年:中心区画、総合留置場内特一級檻
囚人、リエラロノフトゲル・カルヴェリデウサスの言葉より。―
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CHAPTER2:3-1:ENCOUNTER vol.1
−0−
一瞬の出来事だ。
衝撃が俺を襲い、光が俺を誘う。
衝撃は俺に呼吸を止め、人口の夜空へと吹き飛ばす。
腹部、胸部に激痛が走る。肋骨は二本は確実に折れているに違いない。内臓は、大丈夫か・・・?
感じるのは痛み、痛み、背に受ける風、痛み、そして叫び。
「がぁああアアア!!!」
襲い掛かる“一度死んだ者”が俺の目の前にいた。
瞬間的に持つ銃の銃口を向ける。
発砲。
衝撃。
「がっ!!」
“一度死んだ者”が鉛の玉など恐れるはずもなく、よけるはずも無いのか。
銃口から放たれた弾は確かに“一度死んだ者”の体を捉えた。
弾は手のひらを捉え、肉をブチ切り、骨を貫通し、腕筋に走り、爆砕した。
生暖かい血が降り注ぎ、肉片は飛び散る。
神経がみえ、激痛の信号を走らせているだろうに。
なのに、顔色一つ変えないのか。
もうこいつは自然の摂理からは遠く外れている。
「し、・・・ねええ」
俺の首に雷光師の腕が伸びていた。奴の手が俺の首を絞めている。
血管を閉められ、命の運びを止められる。
意識はだんだんと弱くなる。
力もだんだん出せ無くなる。
感覚が強制的に閉じられていく中、辛うじて見えた。
まるで神が“これがお前の最後だ”といわんばかりの光景を、見た。
うそだろ。
何でこれでも生きてるんだ。
ありえない。
「が・・・・あ・あ」
「しねえ、・・・・し、ししんででくれえ」
がん!
右腕を動かし引き金を引く。が、朦朧とする意識と背から吹き付ける風が自由を奪う。
撃った弾丸はあらぬほうへと飛んでいった。
(意識が・・・遠くなる。だ、めだ・・・やめさせない・・と。こいつの・・・うでをはずし・・・て)
絞めるのを止めさせればいい。残る左手を伸ばし、俺は首に添えられた奴の手に触れる。
「駄・・・目だぁ、・・・・しんでく、れ・・・たのむから」
か細い声が聞こえた。
それ以外、何もない。
何もない、真っ暗な世界。
奴の腕に触れたとき、世界が変わってしまったのか。
それとも、俺は死んだのか。
後者が可能性としては高い、か。
「い・・、ひと・・・は・・だ」
なんだ。声か。
「い・だ、ひと・ろ・はいやだ」
嫌だ?何がだよ。
「いやだ、ひと・ろ・はいやだ」
何が、嫌なんだ?
「で・、・・・・いと・・・・・ろ・・る」
無視かよ。
「でも、・・さ・いと・・・は・ろさ・る」
分からないな。
「でも、・・さないと・・・はころされる」
話が見えない。俺は殺されたんだろ?死んだのは俺。だったら地獄なりと連れて行けばいい。
「ほんとう・、こん・・はなか・た」
「こんな・・・し・くなか・た」
だから、なんなんだ?何が言いたいんだよ。
「僕は、殺したくなかったんだ!」
・・・・・・。
息が出来るのか?
心臓は鼓動しているのか?
脳は働いているのか?
俺は生きているのか?
俺は、死んだのか?
もし、これで終わりなら。
もし、これが俺の最後なら。
もし、ようやく死ねたのなら。
俺は、また会えるだろうか。
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